飲食店の「物語」を言葉にすると値段の意味が伝わる

カウンター越しに料理の話をする店主と客

「うちの料理、なんで選ばれないんだろう」と思ったことはありませんか

丁寧に仕込んで、素材にもこだわって、値段だって決して高くない。なのに、なかなかリピートにつながらない。SNSで発信してみたけれど、反応が薄い。そんなもどかしさを抱えているオーナーさんに、今日はひとつ、見方を変えてほしいことがあります。

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「うちの料理、なんで選ばれないんだろう」と思ったことはありませんか

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物語がないのではなく、言葉になっていないだけ

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ストーリーを伝えることで「値段の意味」が変わる

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小さなお店が物語を伝えるための、具体的な3つの場所

それは、「あなたのお店には、すでに物語がある」ということです。ただ、まだ言葉になっていないだけなのです。

物語がないのではなく、言葉になっていないだけ

私が全国の小さな飲食店を訪ねて気づいたことがあります。どのお店にも、必ず「そこにしかない理由」がある。でも、オーナーさん自身はそれを当たり前のことだと思っていて、お客さんに伝えていないことがほとんどなのです。

たとえば、こんな話があります。ある定食屋さんが、地元の農家から野菜を仕入れていました。農家のおじいさんとは20年来のつきあいで、「あの人が作った野菜じゃないと出したくない」という思いがあった。でもメニューには「旬の野菜の煮物」とだけ書いてあった。それだけです。

私が「その話、お客さんに伝えていますか?」と聞いたら、オーナーさんは「こんな話、誰も興味ないでしょう」と言いました。でも、私はそうは思いません。むしろ、その話こそが、チェーン店には絶対にできない、あなたのお店だけの「選ばれる理由」なのです。

ストーリーを伝えることで「値段の意味」が変わる

ここで少し、お客さんの気持ちを想像してみてください。

「野菜の煮物 680円」と書いてあるメニューを見たとき、お客さんの頭の中では無意識に「これは高いか、安いか」という比較が起きています。近所のファミレスの価格と比べて、スーパーの総菜と比べて。そこで「ちょっと高いかな」と感じた瞬間、選ばれない可能性が出てきます。

ところが、こんな一文がメニューに添えてあったとしたらどうでしょう。

「野菜は20年来おつきあいの、○○地区の田中農園から毎朝届きます。農薬をできる限り使わず育てた、旬のものだけを使っています。」

680円という数字は変わっていません。でも、お客さんの感じ方は大きく変わります。「なるほど、だからこの値段なのか」という納得が生まれるからです。

これが、ストーリーが持つ力です。値引きをしなくても、広告費を使わなくても、「なぜこの料理なのか」「なぜこの仕入れなのか」を伝えるだけで、値段の意味がお客さんに届くようになるのです。

「選ばれる理由を整える」という考え方

売り込もうとすると、どうしても値段を下げたくなります。でも値段を下げることは、長い目で見ると自分の首を絞めることになりかねません。月商150万円のお店が、客単価を100円下げると、月に何十万円もの売上が消えていく計算になります。

それよりも、「うちを選ぶ理由」を丁寧に伝えることのほうが、ずっと長く効きます。一度「このお店には理由がある」と感じてくれたお客さんは、少し遠くても、少し高くても、また来てくれます。その積み重ねが、通い続けてくれるお客さんを増やすことにつながっていくのです。

小さなお店が物語を伝えるための、具体的な3つの場所

では実際に、どこでどうやって伝えればいいのか。難しく考えなくて大丈夫です。今日からでもできることを3つ挙げます。

  • メニューの一言コメント:料理名の下に、素材の産地や仕入れのエピソードを2〜3行で添える。「この味噌は、10年前に旅先で出会った蔵元のものを使い続けています」といった、ごく短い話で十分です。
  • 店内の小さな手書きポップ:レジ横や壁の一角に、季節の食材や生産者への思いを書いた紙を貼る。印刷でなく手書きのほうが、温度が伝わります。
  • 口頭でのひとこと:料理を出すとき、「今日のこの野菜、昨日の朝に届いたばかりで特に瑞々しいんです」と一言添えるだけで、お客さんの受け取り方が変わります。

出汁を取るときに、昆布をじっくり水から浸けておくように、伝え方も「じわじわ染み込ませる」ものです。一度言えば終わりではなく、毎日の積み重ねの中でお客さんの記憶に残っていきます。

何を「物語」として語ればいいのか、迷ったときのヒント

「うちには特に語れるような話がない」と感じる方もいるかもしれません。でも、こんな視点で振り返ってみてください。

  • なぜこの料理をメニューに入れたのか(原点・きっかけ)
  • この食材をどこから、なぜそこから仕入れているのか
  • このお店を始めた理由、守りたいと思っていること
  • お客さんから言われて、ふと嬉しかった言葉
  • 季節ごとに大切にしていること、変えないでいること

どれかひとつでも、すぐに思い浮かぶものがあれば、それがあなたのお店の物語の入り口です。華やかな経歴や、特別な仕入れルートがなくても、「このお店の主人はこういう思いで料理を出している」というだけで、十分に伝わるものがあります。

言葉にすることで、あなた自身の軸も見えてくる

物語を伝える、という話をすると、「発信が苦手で…」とおっしゃるオーナーさんが多いです。私はそのたびに、「発信が目的ではなくて、整理が先です」とお伝えしています。

自分のお店の「なぜ」を言葉にする作業は、じつはお客さんのためだけでなく、自分自身のためでもあります。「なぜこの料理をやっているのか」が言葉になっていると、値段を決めるときにも、メニューを変えるときにも、ぶれない軸になってくれます。

あるとき、常連のお客さんから「ここの定食、なんか落ち着くんだよね。なんでだろう」と言われたオーナーさんがいました。その言葉をきっかけに「自分が大切にしていることを言葉にしてみよう」と思い立ち、メニューに一言添え始めたところ、初めて来たお客さんが「なんか、このお店好きだな」と言ってリピートしてくれるようになったそうです。

変えたのは値段でも料理でもなく、「言葉」だけでした。

こうした気づきは、一人で考え続けるよりも、誰かに話すことで整理されることも多いものです。経営の悩みをざっくばらんに話せる場を持っておくことが、長く続く店づくりの静かな支えになることを、私はたくさんのオーナーさんを見てきて感じています。

まとめ:今日、一つだけやってみてください

物語は、特別なものでなくていい。派手でなくていい。ただ、「なぜ」という問いに、自分の言葉で答えられるかどうか、それだけです。

今日、一つだけやってみてほしいことがあります。

一番自信のある料理を一品選んで、「なぜこの料理を出しているのか」を、紙に書き出してみてください。誰かに見せるためではなく、まず自分のために。3行でも、箇条書きでもかまいません。

その言葉が、あなたのお店の物語の、最初の一文になります。


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