飲食店の値上げで客離れは起きるのか?価格と価値の話

飲食店の値上げで客離れは起きるのか?価格と価値の話
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「値上げしたいけれど、お客さんが来なくなったらどうしよう」——そう思って、ずっと踏み出せずにいるオーナーさんは、本当にたくさんいらっしゃいます。その不安は、決して弱さではありません。毎日お客さんの顔を見て、感謝の気持ちで商売をしてきた証拠だと、私は思っています。

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「値上げ=悪」という思い込みは、どこから来るのか

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値上げで離れるお客さんと、残るお客さん

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価格は「伝え方」とセットで考える

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値上げは「選ばれる理由」を整える機会でもある

「値上げ=悪」という思い込みは、どこから来るのか

値上げに後ろめたさを感じる理由のひとつは、「値段を上げる=お客さんに負担をかける」という図式が、頭に刷り込まれているからではないでしょうか。

でも、少し立ち止まって考えてみてください。あなたが使っている食材の仕入れ値は、この数年でどう変わりましたか?光熱費は?パートさんへの時給は?多くの場合、それらはじわじわと、しかし確実に上がり続けているはずです。

にもかかわらず、提供する価格だけを据え置いている。これは一見「お客さんへの思いやり」に見えますが、実際には店が少しずつ削られていく状態です。削られるのは利益だけではありません。やがて、仕込みに使う時間も、食材の質を選ぶ余裕も、失われていきます。

「値上げしない」ことが、結果的にお客さんへ届ける料理の質を下げてしまう——そういう皮肉な逆転が、小さな店では静かに起きやすいのです。

値上げで離れるお客さんと、残るお客さん

ここで少し、現実的な話をさせてください。値上げをしたとき、離れていくお客さんは確かにいます。ただ、それがすべての客離れを意味するわけではありません。

価格だけを理由に来ていたお客さんと、あなたの料理や空間や人柄を好きで来てくれていたお客さんとでは、まったく違う動き方をします。前者は価格が変われば離れますが、後者は「少し高くなっても、ここじゃないと」と残ってくれることが多い。

ここで大切なのは、一人のお客さんが長く通ってくれることの重みです。たとえば月に2回来てくれる常連さんが10年通い続けてくれたとしたら、その方が店に運んでくれる売上の合計は、けっして小さな数字ではありません。月に2回×客単価1,200円×12ヶ月×10年=288,000円。たった一人で、これだけの縁を結んでくれている。

値上げによって一時的に来店数が減ったとしても、残ってくれたお客さんとの関係が深まり、客単価が上がれば、売上の総量は思ったほど落ちないケースが多いのです。

もちろん、これはどの店にも当てはまる「正解」ではありません。ただ、「値上げ=客離れ=終わり」という一直線の図式は、現実とは少しずれていることが多い、ということをお伝えしたかったのです。

価格は「伝え方」とセットで考える

料理と同じで、どんなに素晴らしい食材を使っても、盛り付けや提供の仕方でお客さんの受け取り方は大きく変わります。価格も、同じなのです。

値上げそのものよりも、「なぜこの価格なのか」が伝わっているかどうかが、お客さんの納得感を左右します。たとえば——

  • 「地元の農家さんから直接仕入れているため、少し価格を見直しました」
  • 「使っている○○を、より品質の高いものに切り替えました」
  • 「食材費の高騰が続いており、味を落とさないための判断をしました」

こういった一言が、メニューの端に書いてあるだけで、お客さんの受け取り方はずいぶん違います。「値段だけ上がった」ではなく、「ちゃんと理由がある」と感じてもらえるかどうか。これが、値上げ後の客離れを左右する大きな分かれ目です。

飾る必要はありません。あなたが普段、お客さんに話しかけるような、自然な言葉で十分です。むしろ、そのほうが伝わります。

値上げは「選ばれる理由」を整える機会でもある

私がこれまで相談を受けてきた中で、値上げをきっかけにお店が良い方向へ変わっていったケースを、いくつも見てきました。ある定食屋さんは、長年480円だった日替わり定食を580円に変えたとき、同時にご飯の産地と炊き方をメニューに記載するようにしました。するとお客さんから「ここのご飯、なんでこんなにおいしいんですか」と聞かれる機会が増え、それが口コミにつながっていったといいます。

価格を上げることは、店の「選ばれる理由」を改めて整える機会でもあります。「なぜこの価格なのか」を言語化しようとするとき、自分の店の強みや、大切にしていることが、自然と言葉になってくるからです。

仕込みと同じで、価格の見直しも「なぜこの店なのか」を丁寧に下ごしらえするところから始まります。その準備が8割できていれば、値上げはお客さんへの裏切りではなく、誠実な申し出になります。

今日からできる、小さな一手

むずかしいことは、何も必要ありません。まず今日、こんな小さなことを試してみてください。

今のメニューの中から1品だけ選んで、「この料理に使っている食材や、こだわっていること」を、紙に書き出してみてください。誰かに見せる必要はありません。箇条書きで3つでも4つでも構いません。

それを書いてみると、「あ、自分はこんなことを大切にしていたんだ」と気づく瞬間があります。その気づきが、価格の伝え方を変えるヒントになりますし、値上げへの怖さを少しほぐしてくれることもあります。

値上げは、今すぐ決断しなくていい。ただ、「価格と価値の関係」について、一度立ち止まって考えてみることが、あなたのお店の次の一歩につながるかもしれません。


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