
「また来てくれるかな」という不安は、どの店も同じです
せっかく来てくれたお客さんが、次に来てくれるかどうか。それが気になって、営業中も、閉店後も、頭のどこかにある――そんなオーナーさんは、きっと少なくないと思います。
「また来てくれるかな」という不安は、どの店も同じです
再来店を決めるのは「記憶」です
また行きたくなる店に共通する、3つの小さな習慣
「一人のお客さん」を大切にすることの、経済的な意味
「料理には自信がある。でも、なかなかリピーターが増えない」。そういうご相談を、私はこの30年でほんとうに何度も聞いてきました。そしてそのたびに感じるのは、問題が「味」にあることは、実はとても少ないということです。
今日は、また行きたくなる飲食店に共通する特徴について、私なりの見方をお伝えしたいと思います。「正解はこれだ」と押しつけるつもりはありません。ただ、一つの視点として、読んでいただければ嬉しいです。
再来店を決めるのは「記憶」です
お客さんがまた来るかどうかは、帰り道に何を思い出すか、で決まります。
「おいしかったな」という記憶はもちろん大切です。でも、人の記憶というのは不思議なもので、純粋に「味の評価」として残ることは意外に少ない。むしろ、「あの人に名前を呼んでもらった」「帰り際にひとこと声をかけてくれた」「自分のことを覚えていてくれた」――そういう感情の記憶と、味の記憶がセットになって初めて「また行きたい」という気持ちになるのだと、私は思っています。
料理で言えば、食材そのものがいくら良くても、火加減や塩加減が整っていなければ料理にならない。味という「素材」と、接客や空気感という「仕事」が合わさって、はじめて「また来たい店」ができあがる。そういうことだと思います。
では、その「仕事」の中身は何でしょうか。具体的に見ていきましょう。
また行きたくなる店に共通する、3つの小さな習慣
全国の小さな飲食店を見てきた中で、「この店は長続きするな」と感じる店には、だいたい共通する習慣があります。特別なシステムでも、派手な仕掛けでもありません。ほんとうに、小さなことです。
① 名前を覚えて、呼ぶ
2回目に来てくれたお客さんの名前を、オーナーが覚えていた。それだけで、お客さんの中で「この店は自分を知ってくれている」という感覚が生まれます。
ある小さな定食屋さんで、こんな話を聞いたことがあります。2度目に来てくれたお客さんに「先日もご来店いただきましたよね、ありがとうございます」と声をかけたら、その方が「えっ、覚えてくれてたんですか」と、ちょっと驚いた顔をしたと。それ以来、その方は月に何度も通うようになったそうです。
名前まで覚えるのが難しければ、「顔を覚えていること」を伝えるだけでも十分です。「またお越しいただきましたね」の一言が、次の来店を引き寄せます。
② 前回の会話を、少しだけ覚えている
「このあいだ、お仕事の話をしてくださっていましたが、どうでしたか」「お子さん、運動会でしたよね」――こういう一言が言える店は、強いです。
お客さんにとって、「自分の話を聞いてくれていた」という体験は、単においしい料理を食べた以上の印象を残します。人は、自分に関心を持ってくれる場所に戻りたくなる。それは、飲食店に限らず、人間の自然な感情です。
メモでも、スマートフォンのメモ帳でも、何でもかまいません。お客さんとの会話で印象に残ったことを、一言だけ書いておく習慣をつけてみてください。
③ 帰り際の「一言」を大切にする
お客さんが帰るとき、何を言っていますか。「ありがとうございました」だけで終わっていませんか。それでも十分ですが、もし一言添えられるなら、こんなふうに変えてみてはどうでしょう。
- 「またのお越しをお待ちしております」(次の来店を想像させる)
- 「来週、新しい一品を用意するつもりです」(次に来る理由を渡す)
- 「今日は〇〇をお召し上がりいただきましたが、次は△△もぜひ」(次の楽しみを予告する)
帰り際の印象は、長く残ります。料理と同じで、最後の味が全体の印象を決めることが多い。「また来ようかな」という気持ちは、扉を出る直前のほんの数秒に生まれることが多いのです。
「一人のお客さん」を大切にすることの、経済的な意味
ここで少し、数字の話をさせてください。難しい話ではないので、少しだけお付き合いください。
たとえば、あなたのお店の平均的な客単価が1,500円だったとします。月に1回来てくれるお客さんが、月2回来るようになったら、その方からの月の売上は3,000円になります。年間で36,000円。もし5年通ってくれたら、18万円です。
たった一人のお客さんが、通ってくれる間にお店に運んでくれる売上の合計、これは決して小さくありません。月商150万円前後の小さなお店で、こういうお客さんが30人いるだけで、経営の土台はずいぶん安定します。
新しいお客さんを呼ぶことも大切です。でもそれ以上に、来てくれたお客さんに「また来たい」と思ってもらうことのほうが、実はずっとコストも手間も少なくて、効果が長続きします。広告を出してお客さんを増やすより、今いるお客さんに「また来よう」と思ってもらう工夫のほうが、小さな店には向いています。
「選ばれる理由」は、自分で育てられます
大手チェーンには価格で勝てない。立地でも不利かもしれない。でも、「あの人がいる店」「自分のことを覚えてくれている店」という理由は、大手には絶対に真似できません。小さな店にしかできない「選ばれ方」が、確かにあります。
それは、仕組みでも戦略でもなく、日々の小さな習慣の積み重ねです。名前を呼ぶ。会話を覚える。帰り際に一言添える。どれも、今日からできることです。
ときには、同じ業種の方と話したり、外からの視点を借りたりすることで、「自分では気づいていなかった店の強み」が見えてくることもあります。自分一人で抱え込まず、誰かと対話しながら考えることの価値を、ぜひ一度振り返ってみてください。
今日から一つだけ、試してほしいこと
記事の最後に、一つだけお願いがあります。
今日、お店に来てくれたお客さんの中で、2回目以降の方がいたら、「また来てくださいましたね」とひとこと声をかけてみてください。それだけでいいです。説明も、営業トークも要りません。
その一言が、どんな反応を生むか。ぜひ、ご自身で確かめてみてください。小さな変化が、じわじわと積み重なって、「また来たくなる店」はできていくものだと、私は信じています。
学んで、伸びる店になる。
食塾(SHOKU-JUKU)は、小さな飲食店のオーナーが集まって学ぶ、会員制のWebコンサルティングです。明日の売上に効く打ち手から、一生ものの経営の学びまで。急いで決めなくて大丈夫です。「こういう場所がある」ことだけ、覚えておいてください。

コメントを残す