飲食店のフードロス削減は「ケチ」じゃない

飲食店のフードロス削減は「ケチ」じゃない

「捨てるのがもったいないとは思っているけど、どこから手をつければいいか分からなくて…」

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ロスを減らすことは、ケチることではない

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仕込み量の「設計」という考え方

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「使い回し」ではなく「展開」という発想

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「捨てない仕組み」を作るための、小さな習慣

そんな声を、長年たくさん聞いてきました。フードロスの問題は、頭では分かっていても、毎日の営業に追われているとなかなか腰を据えて向き合えないものですよね。責める気持ちなど、まったくありません。むしろ、「もったいない」と感じていること自体が、すでに大切な感覚だと思っています。

今日は、その感覚をもう少しだけ前に進めるヒントをお伝えできればと思います。

ロスを減らすことは、ケチることではない

「フードロスを減らしましょう」と言うと、「材料をケチって料理の質を落とす話ですか?」と思われることがあります。でも、それは少し違います。

私が言いたいのは、食材を使い切る技術を磨くことです。これは節約の話ではなく、料理人としての腕の話です。

たとえば、大根を仕入れたとします。皮は捨てますか? きんぴらにすれば立派な一品になります。葉は? 刻んで混ぜご飯や漬け物に使えます。煮物に使った後の煮汁は? 翌日の味噌汁や煮込みのベースになります。

一本の大根から、いくつの料理が生まれるか。それを考えることこそ、昔ながらの料理人の知恵であり、腕の見せどころだと私は思っています。

食材を無駄なく使い切ることは、お客さんへの誠実さでもあります。「この店は、食材を大切に扱っている」という印象は、言葉で伝えなくても、料理の丁寧さや品書きの構成からじんわりと伝わるものです。そして、そういう店は長く愛されます。

仕込み量の「設計」という考え方

ロスが生まれる原因のひとつは、仕込み量の読み違いです。多めに作っておかないと不安、という気持ちはよく分かります。でも、「なんとなく多め」を続けていると、廃棄が積み重なっていきます。

ここで一度、仕込みを料理と同じように考えてみてください。料理は「適量」を守るから美味しくなる。塩も火加減も、多ければいいわけじゃない。仕込み量も同じで、根拠のある量を決めることが、ロスを減らす第一歩です。

具体的には、こんな数字を手元に持っておくと助かります。

  • 曜日ごとの平均来客数(過去1〜2ヶ月分でOKです)
  • 各メニューの週間・月間の注文数(大まかでかまいません)
  • 仕入れた食材が何日で使い切れているか

月商100万円前後の小さな定食屋さんでも、この3つを把握するだけで「火曜日は大根を半分だけ仕込めばいい」「この煮物は週に20食しか出ないから、まとめて仕込んでも3日が限界」という判断ができるようになります。

細かい表計算ソフトは必要ありません。ノートに書き留めておくだけでも、1ヶ月もすれば傾向が見えてきます。

「使い回し」ではなく「展開」という発想

「使い回し」という言葉には、少し後ろめたいイメージがあるかもしれません。でも私は、「食材を展開する」という言い方の方が、実態に近いと思っています。

プロの料理人は、一つの食材から複数の料理を設計します。これは手を抜いているのではなく、食材の可能性を最大限に引き出しているのです。

たとえば、こういう展開の例があります。

  • 鶏もも肉 → ランチの唐揚げ定食 → 夜の親子丼 → 翌日の鶏汁(スープ)
  • 玉ねぎ → 煮込みのベース → ランチのサラダ → 余ったらスープに
  • 豚バラ → 角煮 → 煮汁を使った煮卵 → 翌日の炒め物

こうした「展開」を意識してメニューを組み立てると、仕入れの種類を絞りながらも品書きに幅が出ます。お客さんから見れば「いつ来ても何か違うものがある」と感じてもらえる。これは、お客さんが「また来ようか」と思ってくれる理由のひとつになります。

一人のお客さんが、何度も足を運んでくれる。その積み重ねが、小さな店の売上を支えます。月商150万円の店で、リピートのお客さんが月に1回来るのと月に2回来るのでは、年間で計算するとずいぶん違う数字になります。フードロスの削減は、そのリピートの質にも静かにつながっているのです。

「捨てない仕組み」を作るための、小さな習慣

ロスを減らす取り組みは、一気にやろうとすると続きません。まずは小さな習慣から始める方が、長続きします。

あるとき、九州で小さな割烹を営む方から相談を受けました。毎日、冷蔵庫の奥に「使いそびれた食材」が溜まっていくのが悩みだとおっしゃっていました。そこで提案したのは、「朝の冷蔵庫チェックを3分だけやってみてください」というものでした。

今日使い切るべき食材を冷蔵庫の手前に出しておく。それだけです。たった3分の習慣が、「今日の日替わり」を決める材料になり、仕込みの優先順位を整えてくれます。数ヶ月後、その方は「廃棄がずいぶん減った」と笑顔で話してくれました。

難しいことは何もしていません。ただ、毎朝3分、冷蔵庫と向き合うことを続けただけです。

こういう小さな積み重ねの話は、一人で考えていると行き詰まることもあります。同業の方や、少し外の視点を持つ人と話すことで、「そういう見方もあるのか」と気づくことがある。そんな場を、日頃から持っておくことは、じわじわと店を育てる力になります。

まとめ:ロスを減らすことは、選ばれ続ける店になること

フードロスの削減は、コスト削減の話でも、環境問題の話でもあります。でも私がいちばん伝えたいのは、それは料理人としての誠実さの表れだということです。

食材を大切に使い切る。仕込みに根拠を持つ。食材を展開してメニューに幅を持たせる。こうした積み重ねが、料理の質を下げることなく無駄を減らし、お客さんに「この店は丁寧だ」という印象を静かに与えていきます。

そしてその印象こそが、長く通い続けてもらえる理由になります。値段でも立地でもなく、「この店が好きだから」という理由で選ばれ続けること。それが、小さな店が生き続ける一番の力だと、30年間ずっとそう思っています。

今日からできる小さな一歩を、ひとつだけ提案させてください。

明日の朝、営業前に3分だけ冷蔵庫を開けて、「今日中に使い切るもの」を手前に並べてみてください。それだけでいいです。その3分が、仕込みの判断を変え、日替わりのアイデアを生み、ほんの少しの廃棄を減らしてくれるはずです。小さな店の、小さな変化が、積み重なって大きな力になります。


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