飲食店の利益が残らない本当の理由と一枚紙の見方

飲食店の利益が残らない本当の理由と一枚紙の見方

「売上はそこそこ立っているはずなのに、月末になるとお金が残っていない」——そんな感覚、ありませんか。

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売上は「体温」、利益は「体力」です

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飲食店の利益が残らない構造を、シンプルに整理する

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「なんとなく黒字」から「わかって黒字」へ

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まず今夜、一枚の紙に書いてみてください

決して経営がいい加減なわけじゃない。毎日一生懸命に仕込んで、仕込んで、お客さんに喜んでもらいたい一心でやっている。それなのに通帳の残高がいつも寂しい。あなたが悪いのではなく、ただ「お金の流れの見方」を誰かに教えてもらう機会がなかっただけだと、私は思っています。

今日は、小難しい経営学の話ではなく、一枚の紙とペンさえあれば今夜からでも試せる「お金の見方」をお伝えしたいと思います。

売上は「体温」、利益は「体力」です

料理人の私がよく使う例え話があります。体温が高い人が必ずしも健康とは限らない。むしろ熱が出ているということは、体がどこかで消耗しているサインかもしれない。飲食店の売上も、これとよく似ています。

月商150万円の店があったとします。数字だけ見ると「まあまあやっている」と思えるかもしれません。でも、食材費に60万円、スタッフの人件費に45万円、家賃に15万円、光熱費や消耗品に10万円——合計すると130万円。手元に残るのは20万円です。そこからオーナー自身の生活費を出したり、設備の修繕費を積み立てたりすると、実質ほとんど残らない。

これは珍しいケースではありません。売上という「体温」は高くても、利益という「体力」は底をついている——そういう状態のお店は、全国にたくさんあります。

大切なのは、月商という数字を誇ることではなく、「その売上からいくら手元に残るか」を把握することです。

飲食店の利益が残らない構造を、シンプルに整理する

お金の流れは、実はとてもシンプルです。難しく考える必要はありません。一枚の紙に、次の順番で書き出してみてください。

  • ①売上(1ヶ月にお客さんからいただいた金額の合計)
  • ②食材費(仕入れにかかったお金。売上の28〜35%が目安と言われます)
  • ③人件費(スタッフへの給与。オーナー自身の「給料」も含めて考える)
  • ④家賃(毎月固定でかかる賃料)
  • ⑤その他の経費(光熱費、消耗品、クレジット手数料、広告費など)
  • ⑥手元に残るお金(①から②〜⑤を全部引いた金額)

これだけです。会計ソフトも、スプレッドシートも、今は必要ありません。まず手書きで「見える化」することが大事です。

このとき、②食材費と③人件費を合計した数字を「FLコスト(エフエルコスト)」と呼びます。FはFood(食材費)、LはLabor(人件費)の頭文字です。飲食業界では、このFLコストが売上の55〜60%以内に収まっていると、経営として健全な状態とされることが多いです。もし70%を超えているなら、どちらか、あるいは両方に問題が隠れている可能性があります。

ただし、これはあくまでひとつの目安です。業態や立地、客単価によっても変わりますので、「うちはこの数字にしなければダメだ」と思い詰めないでください。まずは「自分の店の現状を知る」ことが出発点です。

「なんとなく黒字」から「わかって黒字」へ

ある定食屋さんのオーナーから相談を受けたことがあります。月商はコンスタントに120万円ほどあるのに、毎月「苦しい」と感じているとおっしゃっていました。一緒に一枚の紙に書き出してみると、問題はすぐに見えてきました。

食材費が売上の40%近くかかっていたのです。丁寧な仕事をされているお店でしたから、食材へのこだわりは素晴らしいことです。でも、ランチの価格設定がそのコストに追いついていなかった。メニューの値段を決めたのが5年前で、その後、食材の仕入れ価格が少しずつ上がっていたのに、価格を据え置いたままにしていたのです。

このオーナーは「数字が苦手で、見るのが怖かった」とおっしゃっていました。その気持ちはよくわかります。でも、数字は責めてくるものではありません。現状を教えてくれる、静かな道案内です。

「なんとなく黒字」と「わかって黒字」は、見た目の結果が同じでも、まったく別の状態です。わかって黒字であれば、次の一手が打てます。食材費が高いなら仕入れ先を見直す、あるいは価格を少し調整する、あるいはロスを減らす——選択肢が見えてきます。

「客単価」と「来店回数」で手元のお金を増やす発想

売上を増やすというと、「新しいお客さんをもっと集めなければ」と考えがちです。でも、小さなお店にとって、新しいお客さんを集めるのはコストも手間もかかります。

もう少し別の角度で考えてみてください。今来てくださっているお客さんに、もう少し満足していただいて、また来ていただく。そして、一度の来店で少しだけ多く喜んでいただく。——この二つを意識するだけで、売上の質が変わります。

たとえば、月に1回来てくれる常連さんが50人いるとして、客単価が平均1,200円だとします。これが月2回来てくれるようになったら、それだけで月商が6万円増えます。客単価が1,400円になったら、同じく50人×月1回でも1万円の上乗せです。

どちらも「値下げ」も「大量集客」も必要としません。今いるお客さんとの関係を、少しだけ丁寧に育てることで生まれる変化です。一人のお客さんが通い続けてくれる間に運んでくれる売上の合計——これを意識すると、目先の客数より、お客さん一人ひとりとの関係がいかに大切かが見えてきます。

まず今夜、一枚の紙に書いてみてください

数字の話は、どこか冷たく感じることもあるかもしれません。でも、仕込みと同じで、数字も下ごしらえが8割です。素材(現状の数字)をちゃんと把握してからでないと、どんな味付けも(どんな対策も)うまくいきません。

うまくいっているお店のオーナーさんに共通しているのは、「特別な才能がある」ことではなく、「自分の店の数字を、ちゃんと自分の言葉で語れる」ことだと、私は30年間で感じてきました。難しいソフトも、分厚い本も必要ありません。まずは一枚の紙があれば十分です。

ときには、信頼できる税理士さんや、同業の先輩オーナーに「うちの数字ってどう見えますか?」と聞いてみることも、思いがけない気づきをくれることがあります。自分一人で抱え込まず、話せる相手を持っておくことは、経営を長く続けるうえでとても大きな力になります。

今日からできることを、一つだけお伝えします。

今夜、先月の売上・食材費・人件費・家賃・その他経費を、紙に縦に書き出してみてください。正確な数字でなくて構いません。「だいたいこのくらい」で十分です。それを引き算して、手元に残った数字を眺める。それだけでいい。

その一枚の紙が、あなたのお店をもう少し楽にするための、最初の地図になります。


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