
「売上はそれなりに上がっているはずなのに、月末になると手元に残るお金が思ったより少ない」——そんなもやもやを感じたことは、ありませんか。
FLコストとは「食材費+人件費」のこと
飲食店のFLコスト、目安はどのくらい?
計算してみましょう——月商150万円の店を例に
FLコストを「改善する」より先に「知る」ことが大事
原因がどこにあるのか、どこから手をつければいいのか、わからないまま日々の仕込みに追われている。そういうオーナーさんと、私はこれまで何度もお話をしてきました。責める話をするつもりはありません。ただ、少しだけ「数字の見方」を知っておくと、霧が晴れる感覚があります。
今日は、飲食店の経営を語るときによく出てくる「FLコスト」という言葉を、できるだけ現場の感覚に近い言葉でお伝えしたいと思います。
FLコストとは「食材費+人件費」のこと
FLコストとは、F(Food cost=食材費)とL(Labor cost=人件費)を合わせた合計金額のことです。難しそうな名前がついていますが、中身はシンプルです。
「今月、材料にいくら使ったか」と「今月、人を動かすのにいくら使ったか」——この2つを足したもの。それだけです。
小さな飲食店の経営を考えるとき、この2つは「大きな2本柱」と呼ばれるくらい、支出の中でも特に割合が大きくなりがちです。だからこそ、まずここを把握しておくことが、経営の「下ごしらえ」になります。
具体的に何が含まれる?
- 食材費(F):仕入れた食材、調味料、飲み物、消耗する備品(ラップや使い捨て容器も含む場合があります)
- 人件費(L):スタッフへの給与、アルバイト代。夫婦経営の場合は、ご夫婦が「自分たちへの給与」として見込んでいる金額も含めて考えるのが実態に近いです
「夫婦2人だから人件費ゼロ」と考えると、実は見えにくい問題が生まれます。2人の労働にも当然、価値とコストがあります。そこをゼロにしてしまうと、本当に店が回っているのかどうかが見えなくなるのです。
飲食店のFLコスト、目安はどのくらい?
一般的によく言われている目安は、売上に対してFLコストが55〜60%以内というラインです。
たとえば月商が120万円の定食屋さんであれば、食材費と人件費を合わせて66〜72万円以内に収めることができれば、一応の「バランスの取れた状態」と見ることができます。
もう少し細かく見ると、業態によって目安は変わってきます。
- 食材費(F)の目安:売上の28〜35%程度。ラーメン専門店などは食材原価を抑えやすく、鮮魚を扱う料理屋は高くなりやすい傾向があります
- 人件費(L)の目安:売上の25〜30%程度。席数が少なく、夫婦2人で回せている店はここが低く見えやすいですが、前述の通り「自分たちへの報酬」を含めて考えるとこのくらいになります
ただし、「目安を超えたらアウト」というわけではありません。これはあくまで「ひとつの物差し」です。大切なのは、自分の店の数字がどのくらいか、まず知るところから始めることです。
計算してみましょう——月商150万円の店を例に
少し具体的に見てみましょう。たとえば、月商150万円の小さな洋食屋さんを例に考えます。
ある月の数字がこうだったとします。
- 食材費(F):52万円(売上比 約34%)
- 人件費(L):40万円(売上比 約27%)
- FLコスト合計:92万円(売上比 約61%)
この場合、FL比率(FLコストを売上で割ったもの)は61%。目安の55〜60%よりわずかに高い状態です。
「これは問題だ、すぐ改善しなければ」と慌てる必要はありません。ただ、「食材費がやや高めかな」「人件費を含めるとちょっと重いな」という気づきのきっかけにはなります。
仕込みと同じで、数字も「下ごしらえ」が8割です。毎月の数字を記録しておくだけで、半年後には「あの月だけ食材費が跳ね上がっていたな」「あの時期は人が多かったな」と、自分の店のリズムが見えてくるようになります。
FLコストを「改善する」より先に「知る」ことが大事
FLコストという言葉が出てくると、「下げなければいけない」という方向に気持ちが向きがちです。でも私は、まず「知ること」のほうが大切だとお伝えしています。
食材費を下げようとすると、仕入れ先を変えたり、使う素材の質を落としたりという方向になりやすいです。でもそれは、お客さんが「あの店に行く理由」を削ることにもなりかねません。
人件費を下げようとすると、スタッフを減らしたり、自分たちの労働時間を増やしたりすることになります。それが体に無理をきたすようであれば、本末転倒です。
FLコストを「下げる」のではなく、「売上との比率をどう整えるか」という見方のほうが、健全な考え方に近いと私は思っています。つまり、FLコストを下げるのではなく、売上を少し上げることでバランスを取る。あるいは、メニューの価格構成を見直して、食材費の割合が高いものと低いものをうまく組み合わせる。そういう方向性もあります。
ある定食屋さんのオーナーさんが「野菜炒めは安くて儲からないんですよね」とおっしゃっていたことがあります。でもよく聞いてみると、そのメニューがきっかけでリピートしてくれるお客さんがとても多かった。つまり、そのメニュー単体の食材費が高くても、「また来てもらえる理由」を作っていたわけです。1回の注文だけで損得を判断するのではなく、「何度も来てくれることで生まれる価値」も含めて考えると、見え方が変わってくることがあります。
数字は、そういう「気づきを引き出すための道具」だと思っていただけると、少し気楽に向き合えるかもしれません。
経営のことは、一人で抱えて悩むより、誰かに話すだけで整理されることがあります。同業の仲間でも、信頼できる人でも——「相談できる場を持つこと」は、調理技術を磨くことと同じくらい、お店を長く続ける力になると私は感じています。
今日からできる小さな一歩
難しく考えなくて大丈夫です。今月の数字を、一度だけ計算してみてください。
「今月の食材費の合計」+「今月の人件費(自分たちの取り分を含む)の合計」=FLコスト
そして、その金額を今月の売上で割ってみる。出てきた数字が、あなたの店の今の状態を映す「最初の鏡」になります。
その数字が良くても悪くても、まずは知ることが第一歩です。知ってはじめて、次の考え方ができます。焦らず、ゆっくりと、自分の店のリズムをつかんでいきましょう。
学んで、伸びる店になる。
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