飲食店の近くに競合ができたとき、やってはいけないこと

近所に競合店ができて考え込む飲食店オーナー

ある日、近所に自分と似たジャンルの飲食店がオープンした。そのことを知ったとき、胸がざわっとした経験はありませんか。「お客さんが取られてしまうんじゃないか」「何か手を打たなければ」と、夜も少し眠れなかった、というオーナーさんもいらっしゃいます。その気持ち、私にはよくわかります。

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まず「値下げ」だけはしないでください

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「競争」ではなく「なぜあなたの店なのか」を整える

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一人のお客さんとの関係を、もっと大切にする

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「共存」の立ち位置を探してみてください

でも、そのざわつきのまま動くと、じつは一番やってはいけない方向に進んでしまうことがある。今日はそのことをお話ししたいと思います。

まず「値下げ」だけはしないでください

近くに競合店ができたとき、多くのオーナーさんが最初に考えるのが「価格を下げる」ことです。気持ちはよくわかります。少しでも安い方をお客さんは選ぶはずだ、という直感から来るものです。

でも、これは小さな飲食店にとって、非常に危険な一手です。

たとえば、月商150万円のお店があったとします。平均客単価が1,200円だとすると、月に約1,250人のお客さんが来ているイメージです。ここで「100円引き」のキャンペーンをしたとしましょう。1,250人に100円引きをすれば、それだけで月に12万5千円の売上が消えます。しかも、食材費も人件費もほぼ変わらないまま。手元に残るお金、つまり利益はもっと大きく削られてしまいます。

それだけではありません。一度下げた価格を元に戻すのは、上げるよりずっと難しい。お客さんは「あのお店、前より高くなった」と感じてしまうからです。値下げは、じわじわと店体力を削っていく。そう思っていただいた方がよいと思います。

しかも、もし相手の競合店が大きな資本を持つチェーン店や、オープン当初の勢いで値段を攻めてくる新店だった場合、価格勝負では最初から勝ち目がほぼありません。小さな個人店が、体力で戦う相手ではないのです。

「競争」ではなく「なぜあなたの店なのか」を整える

では、何をすればいいのか。私がいつもオーナーさんにお伝えしていることは、「競争しようとしない」ということです。

料理の世界には「引き算の美学」という考え方があります。素材の味を活かすために、あえて手を加えすぎない。それと同じで、競合への対抗意識でいろんな手を打とうとすると、かえって自分のお店の「らしさ」が薄れてしまいます。

お客さんが「またあのお店に行こう」と思ってくれるのは、価格が安いからだけではありません。ほとんどの場合、それ以外の理由です。たとえば——

  • いつも同じお母さんが笑顔で迎えてくれる
  • 自分の好みを覚えてくれている
  • あそこの〇〇だけは他では食べられない
  • なんとなく、あの空間にいると落ち着く
  • 子どもを連れて行っても嫌な顔をされない

こういった「その店でなければ得られないもの」が、お客さんを繰り返し呼び戻す力になります。マーケティングの言葉では「差別化」と言いますが、難しく考えなくて大丈夫です。要するに「あなたの店だからこそ」という理由を、もう一度丁寧に棚卸しすること。これが、競合店ができたときにまず取り組むべきことだと私は思っています。

一人のお客さんとの関係を、もっと大切にする

ここで少し数字の話をさせてください。といっても難しい話ではありません。

一人のお客さんが、月に2回来てくれるとします。客単価が1,200円なら、月2,400円。年間で28,800円。これが5年続けば、そのお客さんお一人が運んでくれる売上の合計は、14万4千円になります。

もし、そういうお客さんが50人いたら——年間で約144万円です。月商に換算すると12万円。これは「固定客50人」という、一見地味に見える数字が生み出す、じつはとても大切な土台です。

新しいお客さんを呼び込もうとするより、今すでに来てくれているお客さんに「また来たい」と思ってもらう方が、コストも労力もずっと小さくて済みます。競合店がオープンしたからといって、今いるお客さんへの対応が雑になってしまったら、それこそが一番の損失です。

競合ができたときこそ、今のお客さんへの感謝と丁寧さを、もう一段上げてみてください。「いつも来てくださってありがとうございます」という気持ちが、接客の細部ににじみ出たとき、お客さんはそれをちゃんと感じ取ってくれます。

「共存」の立ち位置を探してみてください

ここまで読んでくださった方は、もうお気づきかもしれません。競合店は、必ずしも「敵」ではないかもしれない、ということに。

たとえば、近くにラーメン店がオープンして、自分も麺類を出していたとします。でも相手は夜営業がメインで、自分は昼だけ。相手は若い男性客が多く、自分は子育て中のお母さんが多い。こういう場合、お客さんの層はほとんど重なっていなかった、ということがよくあります。

または、近くに飲食店が増えることで、その一帯が「グルメな街」として認知されて、むしろ人の流れが増えた、というケースも私はたくさん見てきました。以前、ある定食屋さんのオーナーが「同じ通りに3軒も新しい店ができて困った」とおっしゃっていたのですが、半年後に話を聞くと「なんか人が来るようになった。あの子たちのおかげかもしれない」と笑っておられました。

競合店ができたとき、一番最初にやってほしいことは——相手を観察することです。何時から何時まで開いているか。どんなお客さんが来ているか。自分のお店と何が違って、何が似ているか。怖がらずにフラットに見てみてください。そうすると「自分たちの居場所」が、むしろはっきり見えてくることがあります。

整理すると、競合ができたときに考えるべきことはこうです。

  • 相手と自分の客層・時間帯・価格帯を比べて、本当に重なっているか確認する
  • 自分のお店の「これだけは負けない」「これだけは他で出せない」を書き出す
  • 今来てくれているお客さんへの対応を、もう一段丁寧にする
  • 値下げは、少なくとも「最後の手段」として位置づける

こういった問いを、一人で抱えているより、信頼できる誰かと話してみるだけで、ものの見え方がガラッと変わることがあります。悩みを言葉にする場を持っていると、気づきのスピードがまるで違う。そのことも、少しだけ覚えておいていただければと思います。

今日から一つだけ、やってみてください

難しいことはいりません。今日、お店を閉めたあとに10分だけ時間をとって、「うちのお客さんが、うちに来てくれる理由は何だろう」とノートに書き出してみてください。

価格でも立地でもなく、「あなたの店ならでは」の理由を3つ。思いつかなければ、常連さんに聞いてみるのもいい方法です。「なんでうちに来てくれるんですか?」という素朴な質問は、お客さんとの会話を深めるきっかけにもなります。

競合店に気を取られて、自分のお店の良さを見失わないでいてください。あなたのお店には、すでにそれがあるはずですから。


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