常連さんが静かに離れていくときのサイン

常連さんが静かに離れていくときのサイン

「最近、あのお客さん来ないな」と気づいたとき、もうすでに少し遅いのかもしれません。でも、責める必要はありません。忙しく厨房に立ちながら、一人ひとりのお客さんの変化をすべて捉えるなんて、そもそも簡単なことではないのです。ただ、「気づく目」を少しだけ育てることはできます。今日はそのお話をさせてください。

1

クレームが出ないまま、人は離れていく

2

離れる前に現れる、小さな変化のサイン

3

離れる理由はたいてい、「飽き」ではなく「ズレ」

4

今日から始められる、ひとつの小さな習慣

クレームが出ないまま、人は離れていく

飲食店を長く続けていると、不思議なことに気づきます。怒って帰るお客さんより、何も言わずに来なくなるお客さんのほうが、はるかに多いのです。

クレームというのは、ある意味で「まだ期待してくれているサイン」でもあります。わざわざ声に出してくださるということは、改善すれば戻ってきてくれる可能性がある。でも、何も言わずに離れていく方は、すでに心の中で「もういいか」と結論を出してしまっているのです。

私がこれまで相談を受けてきた小さなお店の多くで、売上が少しずつ落ちていく局面を見てきました。月商が200万円あったものが、半年かけてじわじわと160万円になっていく。新しいお客さんも来てはいるのに、なぜか総数が増えない。そういうとき、たいていの場合、常連さんが少しずつ減っていることが原因でした。

一人の常連さんが月に4回来てくださり、客単価が2,000円だとすれば、年間で約10万円近い売上をその方一人が支えてくれています。その方が来なくなるということは、広告費をかけて新規のお客さんを3〜4人呼んでやっとプラスマイナスゼロ、という話になるのです。

離れる前に現れる、小さな変化のサイン

常連さんが離れていくとき、たいていその前に「予兆」があります。スープがぐつぐつ沸騰する前に、底のほうでそっと小さな泡が立ち始めるように。気づきにくいけれど、確かに変化は起きているのです。

以下は、私が多くのお店を見てきた中で「あ、これが出てきたら少し注意が必要だな」と感じてきたサインです。一度、頭の片隅に置いてみてください。

  • 来店の間隔が少しずつ開いてきた 以前は週1だったのに、最近は2週間に1回になっている。たった1人の話ですが、それが3〜4人重なると、月の客数にじわじわ響いてきます。
  • 注文の内容が変わってきた いつもお酒を頼んでいた方がソフトドリンクだけになった、コースを頼んでいた方が単品だけになった、というような変化。財布の事情のこともありますが、「もうそこまで入れ込まなくていいか」という気持ちの変化であることもあります。
  • 帰り際の言葉が短くなった 以前は「また来ます」「ごちそうさまでした、美味しかった」と一言添えてくれていたのに、最近は無言でお会計を済ませて出ていかれるようになった。これは小さいけれど、大切なサインです。
  • スタッフや店主との会話が減った 常連さんとの何気ない雑談が、気づいたら減っていた。お客さん側が少し距離を置き始めているのかもしれません。
  • 予約のキャンセルが増えた、または予約しなくなった 以前は必ず予約を入れてくださっていたのに、最近は来ても飛び込みで、しかも来たり来なかったりになった。

どれも単体では「そういうこともある」で済む話です。でも、2つ3つ重なってきたら、少し立ち止まって考えてみることをおすすめします。

離れる理由はたいてい、「飽き」ではなく「ズレ」

「同じ常連さんにずっと来てもらうのは難しい、飽きられるのは仕方ない」と諦めているオーナーさんに、時々お会いします。でも私の経験では、常連さんが離れる理由の多くは「飽き」ではなく「ズレ」なのです。

お客さんとお店の間に、少しずつ小さなズレが積み重なっていく。それに気づかないまま時間が経つと、ある日「なんとなくあの店じゃなくてもいいか」という気持ちになってしまう。

ズレが生まれる原因はいくつかあります。料理の質が変わった、ということもありますが、意外と多いのは「自分のことを覚えていてもらえていない感じ」「昔と比べてなんとなく忙しそうで話しかけにくくなった」「常連なのにいつまでも一見さん扱いされている感じ」といった、関係性の温度の変化です。

つまり、離れていく理由の多くは、料理の問題ではなく、「関係の問題」なのです。これは、逆に言えば、特別な費用をかけなくても改善できる可能性があるということでもあります。

今日から始められる、ひとつの小さな習慣

難しいことをする必要はありません。特別なアプリも、ポイントカードも、今すぐ必要ではないのです。

ただ、「見る習慣」を持つことだけは、始めてみてほしいと思います。日々の営業の中で、常連さんの小さな変化に気づこうとする意識を持つこと。それだけで、見えてくるものが変わります。

私がよく伝えることがあります。「お客さんのことを知ろうとする努力は、仕込みと同じで、表に出る前の8割の仕事です」と。華やかなサービスや新メニューも大切ですが、それを受け取ってくれる人との関係が土台になければ、何も乗っかりません。

また、こういう「人を見る目」や「店を俯瞰で見る視点」は、一人で抱えていても行き詰まることがあります。同じ悩みを持つ同業者と話す機会を持ったり、第三者に話を聞いてもらったりすることで、自分では気づけなかったことに気づけることがあります。誰かに話す、それだけでも視点は広がるものです。

今日からできる、小さな一手

今日の営業が終わったあと、5分だけ時間をとってみてください。「今日来てくれた常連さんの中で、少し変化を感じた方はいたか」をノートの端にでもメモしてみる。名前でなくても、「いつもカウンターの端に座るあの方」でかまいません。それを1週間続けるだけで、きっと小さな気づきが積み上がってきます。特別な道具も費用も必要ありません。今夜から、始められます。


ひとりで悩む時間を、学びの時間に。

食塾(SHOKU-JUKU)は、小さな飲食店のオーナーが集まって学ぶ、会員制のWebコンサルティングです。明日の売上に効く打ち手から、一生ものの経営の学びまで。急いで決めなくて大丈夫です。「こういう場所がある」ことだけ、覚えておいてください。

▶ LINE公式アカウントに登録する(無料)
▶ 無料セミナーの案内を見る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA